難民漂着

真夏の深夜、呼び出しを受け寝室を出た彼は
秘書官から大勢の難民が漂着したと報告を受けた
 
どこの難民だと聞けば、この国の難民だと言う。
この国?
どういうことだ?
 
200名近くの難民は区の体育館に収容されていた
ドアを開いた調査官はその異様さに驚いた。
 
焦げた匂いのする室内には
さらに人が増え400名くらいに達している
どういうことだ?
 
代表と名乗る男は、疲れた顔で官邸の
執務室のソファに座っている
 
男の差し出した名刺には内閣総理大臣
と書かれている。
 
彼は燻し顔でこの国は他国の難民を
受け入れる準備がないと英語で伝えた。
 
男はすまなそうに、私たちも同じ国民だ。
ただ時代が違う。
 
真に申し訳ないが、自分たちの時代では
すでに資源が枯渇し、大国同士の大きな戦争の中で
身の安全を確保できる場所を失ってしまった。
 
こうして時間を越えて過去へ難民として
逃げる手段しかなかったのだと伝えた。
 
本来はもっと過去に移動する予定だったが
息継ぎのためにこの時代に立ち寄ったとも
付け加えた
 
一時的なものだから、大きな迷惑をかけない
 
すこし待ってくれと今の首相は
未来の首相の話を遮った。
 
まったくもって突飛な話であり
理解できない。
 
心配はいらない、水分が補給できれば
われわれは数時間後に移動を始める。
 
今の首相のよくないところは、あまりことを
考えないことだった。
 
とりあえず内々に承諾して彼は給水車と物資を
体育館に回した
 
数時間後に彼らは消えてしまったとの
報告を現場の担当官から受けた
 
ようやく安心して朝を迎え執務についた彼は
翌日の未明再び、呼び出しを受けた。
 
昨夜とは異なる未来の首相と名乗る男が
執務室で待っていた。
 
私たちは未来から逃げてきた
少しだけこの時代で補給させて欲しいと。