40年前より活発な地殻変動が始まり
世界の潮位は徐々に上昇した。
それまで都市と呼ばれていた
札幌、東京、横浜、名古屋、大阪、広島、博多などは
海面下となり今はない。
北海道は東北海道と西北海道に島がわかれ、
房総半島も三浦半島も今は島と呼ばれている。
首都をどこにするかで国会は揉めたらしいが小さかった東京は
さらに小さくなっても首都を譲らず、
八王子市に旧国会を模造した建物を作った。
東海道新幹線も多くは水没してしまったため、
着工中のリニアモーター線を新新幹線に転用することが決まった。
大和半島から鎌倉島、三浦島、房総島までの
新アクアライン構想も生まれたが予算がないので
いつできるかわからない。
ただ、ここ数年は地殻変動は収まっている。
人々の意識の改革とエネルギー政策の見直しで
電力需要はそれほど逼迫してはいないが
慢性的な品不足を解消するまでには至っていない。
ただパラダイムシフトされた現実の中で
それに順応しようとする意識こそが
新しい世界を担っているように思われる。
過去の時代を取り戻すのではなく
今の時間から未来を作っていく。
そこに順応できなかった幾つかの新興国は退廃し
もとの貧しい世界に戻ってしまったらしい。
便利なものは失ってしまったが
それが不幸だとは限らない。。
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少し早く着きすぎたかとホテルのスカイラウンジで彼を
待つ彼女はその細い腕に巻かれた古い時計を覗き込む。
眼下に広がる海は夏の終わりを示すように
少し落ち着いた藍色に広がり
白い入道雲が潮風に引っ張られるように沖に去っていく
関東湾を行きかう帆を立てた定期船が光の波と戯れながら
キラキラと漂うとき
なんとものどかなこの風景を
彼女は好きだなと思う。