2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

沈没

その商船は優雅に大海を泳いでいたが 古い海洋図しか持っていなかったので 都度変化する海面下の状況を把握してなかった。 クリスマスの夜、 空には怖いほどに明るい月が昇っていたにも関わらず 船は北の海で座礁して停止した。 すぐに引き返せばよかったの…

コスモス

朝 目が覚めた。 秋晴れの静かな朝だった。 彼女がこの家を出て行くという朝だから 少しでも早く起きて 父の威厳を示そうと思っていたのだが 二度寝してしまい、家族では一番最後になったのもばつが悪い すっかり片付いた娘の部屋を横目に 階下に下りていく…

流星少年

10代のころ 彼は小さな中古のバイクを買った。 バイク屋の親父は胡散臭そうな目で彼を眺めては捨てるようにキーを渡した。 それでも彼は満足だった。 会社の二階に部屋を借りて彼は一人で住んでいたから、いつも自由で孤独だった。 小さなバイクの小さなエン…