その人

 

その人は年配で顔も体型もこわれ始めていて

記憶も曖昧で、変なこだわりがあった

時々、妙に下手になってありありと持ち上げてくる違和感を感じた。

 

こちらがわからない時は高飛車な物言いだが、十分な情報で補ってくれるわけではない。

にも関わらず、会社の評判や他の人の噂話は

好んで仕掛けてくる。

 

会社や組織やあらゆるものが皮肉の対象だった

正直、職場に対しては居てもいなくてもどうでもいい人なのだ。だから

だんだんその人をみんなは遠ざけ始めた 

出来るだけ関わらないように。

 

その人はどんどん世間からズレていった

声も大きく叫ぶように怒りを露わにした

自分で感情を抑える事ができずに。

 

その騒音に耐えかねたある日、ビルサービスの人がやってきてその人を撤去していった。

 

静かになった。

しばらくしてその窓際の席には

新たな年配の人がやって来て座った。