レトロフューチャー

彼が子供のころ、夢見てた21世紀は雑誌やテレビマンガで描かれた
とてもクールな時代だった。
 
宇宙や深海は開発が進み、国の枠は世界連邦としておおらかな枠に収まり、
市民はコンピュータで管理されている。

同様に気象も生産工場も食物もすべてコンピュータが管理し
実務は組織化されたロボットに任せられている。

災害もなく計画された農作物と工業製品がそれぞれの担当地域で
生産され出荷される

これらは核融合炉の開発成功による安全でクリーンなエネルギーの
存在が大きい。
 
バイオテクノロジー医療とサイボーグの研究も進み
多くの病は克服され、

メークアップの技術も進化し、人々はみな若く、
年代という言葉さえも空ろだった

流線型のエアカーに乗って出勤し、余暇で宇宙旅行を楽しむ
未来人の生活はずいぶん優雅のように思えた。
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現実の21世紀はまだ程遠い
 
今日もまた彼はエコカーに乗って出勤し、余暇で家族一緒の箱根旅行を算段し

老いと病の両親を気遣い、スーパーの値札に右往左往し、
自然災害に心を痛め、増税を叫ぶ政治家の欺瞞を笑い

加速的に老いていく自分の時間をみつめるまもなく

レトロフューチャーの中にきっといつかはそのような時代がくるのかも
と寸間に思う日々である。