黄金の新幹線

 

最終の新幹線で帰ればなんとか

今日中に家まで辿り着く予定だった

 

それが接待に気をよくした先方が

なかなかお開きにしてくれず

彼は内心焦っていた

 

店を出るとタクシーに飛び乗り

駅まで走らせたのだが

最終が出る時間は迫っていた

 

ホームを駆け上がると既に出た後だった。

雰囲気を断って先に出るべきだったと

後悔してもしょうがない

 

行けるところまで帰ろう

ローカル線のホームを目指すと

急にベルがなったので

回送でも来るのかと振り向くと

黄金の新幹線が静かに現れて停まった

 

すると何人かの客が乗り込もうとしている

すわ東京行きならばと我もと乗り込んだ

 

車内もやはり金ピカだった

ドアが閉じ発車のベルと共に

彼はすぐに睡魔に襲われた。

 

目が覚めると熱海の海岸だった

雲もなく三日月は空に登り

波は静かだった

無一文となった彼はここで

降ろされたらしい

 

あれほど焦って乗り込んだのに

よくよく考えればそんな上手い話はない

冷静になれば彼にもわかる話だ。