2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

まだ猫だったころ

子猫は一人で身支度を整え 迎えにくる施設の職員を軒先で待っていた 身の回りの品なんてそんなにはない。 交通事故でなくなった両親を思うと 涙がでそうになるのを踏みとどまり、 遅れて迎えにきた職員に 「おせわになります」 と小さな頭を下げた。

記憶×思い出

記憶に意味はない。 ただそこを通り過ぎた風のようなものだろう。だから彼女の場合、失った恋人に対しても何も感じることはなかった。 男の欲望のままに身を預けることに抵抗はなかったが 抱かれていても彼女は誰のものでもなかった。 記憶はただの歴史にす…

羽根式

買ってもらったばかりの彼の自転車には、小さな羽根がついてた 最新式でまだ他には売ってないんですよ。 と太った店主は話しかけてきた。「うそだい 健太君だって乗ってるよ」そういうと店主は「そんなことない、ほらここをみてごらんなさい」 「この小さなホ…