1972年

彼の通学時間は徒歩で30分くらいかかる。
 
親にせかされて家を出て、神社の前をとおり
農学校を抜けて、九官鳥が置いてある酒屋あたりが
中間地点、
そこから用水路に蓋がしてある市道をとおり
バス通りを越せば、あとは正門までさほど遠くないが
 
近くに田んぼが多かったせいもあり
キラキラと流れる用水路が何本もあって
それを覗いていると遅刻する傾向にあった。
 
思えば、雨の日も風の日もよく通ったものだと思う。
 
クラスで40名、学年で6組あったから
1500名くらいの生徒が通っていて、
3階建ての校舎が3棟、25mのプールと体育館、
全員が集合できるくらいの校庭もあった。
 
時代として子供が増えていく傾向にあり
都度建て直しや拡張の工事が行われていたので
同窓会では個々に記憶の相違が生まれる。
 
当時で創立100周年あたりというから
起源は明治政府ができたころに遡る。
 
そのころの彼の趣味は専らテレビ。
特撮とアニメはよく見てた。
逆にそれ以外は何も興味がなかった。
 
絵を描くことも好きではあったが
やはり好きな漫画の真似が一番多かった。
 
好きな音楽もなかった。
 
わがままな妹は邪魔な存在だったが
助けてくれることもあった。
 
両親が何かを押し付けるということもなかったし
自分の部屋も与えられて
彼は快適だった。
 
将来は何になるかという夢もなかった。
 
ただ永遠に長い時間が繰り返される時代だった。