待合室

その終着駅には小さな待合室があった。
 
初夏の日差しは、
駅舎によりそうポプラの影を
小部屋に落とし、
涼しげな風は改札をとおり抜けていく
 
木製の長椅子の端に
白い服の彼女は一人陣取り
待ち人が現れるのを待っていた。
 
いくつかの列車は到着するも
彼女の待ち人は現れなかった
 
だいたい今日来るという確証はなかった、
明日かもしれないし、明後日かもしれない。
 
そんなこんなで彼女はずっと
当てのない待ち人を待ち続けることに
なってしまった
 
ようやくやってきた彼はすっかり
初老の男だった
 
(やあ ごめんごめん いろいろあって)
彼は明るく手を振った。
 
彼女はあきれた顔を見せずに
(ずいぶん待ちました)
と笑って見せた
 
その笑顔がずっと前の彼女のものであることを
確信させた彼も素直に笑顔を取り戻し
 
(また一緒に暮らしましょう)
と彼女の手をとった。