未成年

金曜の夜、住宅ローンを抱えた彼は
会社のデスクで途方にくれていた
 
酒はない
 
タバコもない
 
女もいない
 
金はない
 
そんな毎日をどう過ごすか彼は考えた。
そういえば そんな毎日を彼は過ごしていた。
 
ギターがあり
 
仲間がいて
 
食事があって
 
時間がある!
 
そのころの彼は音楽のことばかり考えていた
タバコや酒に頼ることなく脳内でリフレッシュできた
 
女や金にすがることなく彼の内側から
自分を変えることができた
 
肥沃する社会と共に、彼の精神は朽ち果て
目の前の一時避難の扉を開く
 
可能性は無限と知りながら、
とがった狭い視線の中で可能性を選んでいる
 
あのころも今も自由だ。
 
昔の彼は甘いのだ 現実はそんなもんじゃないと
否定してみるが、それほど捨てたモンじゃない
 
追いかけられる生活から脱却する
追いかける生活を取り戻す。
 
そんなことを昔の彼に教えられた気がした。