スーパーヒーロー

自分は人とは違うと思っていた
特別な人間なんだ
 
彼の虚栄心は幼児の頃からのものだった
対等な人間なんていない
 
エゴと自己愛の塊だった彼に友人はいなかったが
彼自身はスーパーヒーローだったので(友人なんて)
いくらでもできると思っていた。
 
高級なゲームやおもちゃ、新しい漫画のネタなどを
少し披露してあげればみんなは自分の虜だと思っていた。
 
暑い日の帰り道には仲間にアイスを振舞ってやった。
みんな自分に感謝してると信じていた。
 
ある日、友達がアイスが食べたいから金をくれと言い出した。
別にいいよと言ったが内心ドキッとした。
 
それから毎日のように集られる、
たまに断ると無視される、
しかたないから金を払うという日々が繰り返された。
 
すぐにエスカレートして、物を隠される、捨てられる、
しまいに小突かれて足をかけられて転んで笑われる。
 
そんなときは、
しょうがないな愚民共、こうやってみんなを楽しませてるんだと
彼は思うようにしたが
何か納得いかないので家の中では家族にキレた。
 
両親はそんな彼にさらに高級なおもちゃやお小遣いを渡して
宥め様としたがそれも時間の問題だった。
 
自尊心と現実の狭間で心のバランスが崩れていった。
 
  
学校を出て、社会人になった彼は一人遅くまで残業することが
ある。 デスクスタンドの影にふと あのころの気持ちがよぎる
 
あのとき
どうして自分だけが特別なんだと思ったのだろう?
 
等身大の自分で本音をかわして
付き合える友達を探すことができていれば
あんなに辛い思いはしなかっただろうに...