誰かが誰かに

 
逢魔時の教室には
10人の生徒が補講のために
残されていた。
 
古文の背の高い教師は静かにドアを
開いてクラスを見回した。
 
悪気はないのだ。
そこに見慣れない生徒がいたとしても
 
誰かが誰かに成りすまして
そこにきちんと座っている。
 
彼は、プリントを配り
要所を黒板に書き始めた。
 
みんな 真面目な顔をして
ノートに書き写している
 
彼は書き終えてチョークを置くと
もう一度11人の生徒の顔を
見比べてみた。
  
夕暮れは夕闇にかかり
左端の女子生徒が気を利かせて
蛍光灯のスイッチを押すと
 
パッと明るくなった教室に
生徒たちの笑い声が漏れた
 
彼は眼鏡を押し上げて
その子にありがとうと言った。