桜の園


金沢の下宿先でひとり

インスタントラーメンを啜りながら

朧月を眺める。


三年前 桜の下で待ってると

そう言い残して彼女は彼の前を去った。


それからしばらく桜の下で

彼女が戻るのを待っていたが

再び姿を現すことはなかった。


月は何も語らず ただわらってる。


あれは現実だったのか

夢の中の事だったのか


最近は記憶も曖昧で

何が本当なのかよくわからない。


桜の下に埋まっている記憶は

彼のものだったのか、

彼女のものだったのか?