小さな庭

 
商店街で買い物をすると
金額に応じ小さなてスタンプをくれる。
何枚か集めるとカタログの豪華な景品と
交換してくれる仕組みだった。
 
彼女はスタンプを集め始めて三年くらいになる。
生活必需品や食料品を商店街で買い始めると
結構スタンプは溜まって、
台紙は10冊くらいになった。
何と交換しようかな?とあれこれ考えてる時間が
また楽しかった。
 
そんな彼女にバイト先で知り合った彼ができた。
片言の言葉で外国人であることはすぐにわかったが
物の考え方や人へのマナーなど尊敬できる存在だった。
 
でも
時々みせる悲しそうな横顔だけは
彼女を不安にさせる材料だった。
 
どうしたの?と聞いてみても、彼は
半分の笑顔で答えてくれなかった。
 
そんな彼がスタンプの豪華景品カタログを見たとき
とても驚いた声を上げたことに彼女も驚いた。
 
なにがあったの?と彼の開いている頁を見ると
 
そこには
短恒星間移動用のスターシップ(2000冊)
が載っていた。
 
彼は
自分のスターシップが遭難したので
当初は救援信号を送って救出を待っていたが
この辺鄙ま星からは届かず、しかたがないので
バイトをしながらレストア用の部品を集めていたのだと
初めて打ち明けてくれた。
 
わかったわ!!
このスターシップを手に入れましょう!と
彼女は力強く彼の手を堅く握った。
 
彼女の協力でようやく帰れる道をつかんだ彼は
感動に拉がれ、何度も感謝の言葉を伝えた。
 
それから二人はスタンプを集めるために
一緒に暮らしたほうがいいとの彼女の提案に応じる形で
同棲し結婚し家庭を構え、
彼女の親戚の紹介で彼も正社員の職を得た。
 
しばらくして子供ができ、家を買い
そろそろスタンプが溜まったのでないかと妻に聞いても
あと50冊だからがんばろう!
と、前向きな返事が返ってくるが
 
ときどき残りが60冊とか100冊に変動する。
妻や娘が他の景品に交換したらしい。
 
あのとき、コツコツまじめに自分でレストアしてれば
もうとっくに帰れたかもしれないなと
異邦人は枝豆をかじりながら秋風の中ため息をつく
 
悪いことばかりでもないのだが。。

すると
小さな庭にも心地よい鈴虫が鳴き始めた。