2102年

旧社屋のサーバールームで見つかった
コンピュータの解析を彼女は任せれた。
 
100年前のそれは電源回路が壊れており
記憶域も部分的に剥がれていたが
データの修復を行い、現代のフォーマットに
転記した。
 
再生させると、内臓に鈍い痛みを感じる
重たい頭を抱えながら霧の山道を歩いてる
これはどういうことだろうか?
 
彼女は再生機を一度止めて考えた
 
再び再生を行うと、霧が少し晴れて
青空が見える。足元には湖面の煌きが
映える。きれいだと彼女は感じた。
 
だが再び瓦斯が隠してしまう。
また何も見えなくなった。
 
彼女は記録の内容を上司に報告すると
上司はモニターの中でしばらく考えた後
こんなことを話した。
 
昔のビジネスというのは
誰も先を見通せることができないまま
不安定な山道を登るようなものだったであろう
個人の不調とは別に会社はその不安定な
ゴールを目指す、ときおりすばらしい景色を
見せて社員を高揚させるが根本的には何も見えない
 
おそらくその記憶は初期の人工知能
会社のデータを下に作り出したイメージの実験
だったのではないだろうか。
 
彼女は上司の意見に耳を貸すも
あの生々しい息の戸切れがAIの作り出したものとは
思えなかった。
あれは本当に誰かの記憶の再生ではなかったのか?
先の見通せない世界というものを
彼女は不安げに考え、三次元モニタを切った。