別れのときになって
ようやく見えてくるもの、
思い出すものみたいなのがある。
彼は空を仰いだ。
テレビがつまらない日は
角のコンビニで立ち読みしながら
彼の帰りを待ってたりとか
急な雨の日は傘を抱えて
改札まで迎えに来てくれたりとか
二人で
午后の陽だまりの中
空高く囀る雲雀の歌声を
聞いてたり
田んぼの若い苗を
すり抜ける青い風や
湧き水の中で泳ぐお玉杓子
をずっとのぞいてたことが
ほんとになつかしいって
思えるのは
自分の気持ちが もう
すっかり片付いてしまったんだなぁ と 彼は思う。
ありがとう。
風が白い雲を運ぶ。