2010-03-30 古鯨 嵐の海を古鯨はもがいていた黒く大きな波が幾度も襲い掛かり、狂ったように風は吼える天を向いているのか海底を向いているのかもう分からなかった ただ長い時間、こんな状態がつづいていたので、古鯨は泳ぐのをあきらめかけた座礁したタンカーのように傾きながら身を委ね 嵐がすぎるのを待つのがいい。彼はそう考えた いや ちがう! もし俺がここで嵐に飲まれて行き倒れることがあればこれまでのことは何だったのだろうか 古鯨はガッと目を見開き、再びもがきながら、己の海へ突き進んでいった。