古鯨

嵐の海を古鯨はもがいていた

黒く大きな波が幾度も襲い掛かり、狂ったように風は吼える

天を向いているのか海底を向いているのかもう分からなかった

 

ただ長い時間、こんな状態がつづいていたので、古鯨は泳ぐのをあきらめかけた

座礁したタンカーのように傾きながら身を委ね 嵐がすぎるのを待つのがいい。

彼はそう考えた

 

いや ちがう! 

 

もし俺がここで嵐に飲まれて行き倒れることがあれば

これまでのことは何だったのだろうか

  

古鯨はガッと目を見開き、再びもがきながら、己の海へ突き進んでいった。