タイスの瞑想曲

あくびしたくなるくらい のんびりとした夏休みの空
瀬戸内の海は静かに笑っているように輝く。
 
『パパ 海にいこうよ!』

娘は彼の顔を見つける度にそう声をかけた。
 
『あぁ こんどな』
今度、今度と、ついに今度は来なかった。
 
ゆるやかに弧を描く国道は人影もまばらで
昼下がりのドライブにはちょうどいい
 
娘の机に残されたMDのピアノ曲が風に流れる。
 
『パパ 今日はここまで弾けたよ』
笑みいっぱいの娘の顔があった
 
(あのときもっと褒めてあげればよかった。)
 
いま こうして潮風の中で耳を傾けると
とてもいい曲だということがパパにもわかるよ。
 
カモメが一羽 すーっと 青い空を流れていく。。。