タイムラプス観測所

北の果ての小さな建物が彼女の職場だった
 
アンテナから拾う地場は計測紙に記録され
その中から変移点を拾い終わると、
ケトルのお湯をカップに注ぐ
 
彼女はコーヒーを抱えて屋上の扉を開いた。
 
夏の森はまだ眠りにつかない
湖畔の波はまだ何かが深いところで
動いているような気がする
 
ぼんやりと明るい空は白夜を思いだす。
まだ子供のころの話だ。
 
湖沿いの国道から近づいてくるライトは
同僚の古いステーションワゴン
 
彼女はパーカーのポケットから煙草を取り出すと
もう一度空を仰いだ
 
いくつもの光の帯は自由曲線を描きながら
ベールのように森をつつむ
 
地場の逆転は身近に始まっている