少年A

彼が未成年の頃、犯した罪は
少年審判で裁かれた
 
彼は少年Aとして報道されたが
実名が伏せられた訳ではない。
 
セルの眼鏡をかけた
白髪交じりの裁判官は
静かに正しく彼と彼の家族に告げた。
 
今から君は少年Aです。
親が付けた名前や苗字はなくなります。
戸籍も新しい戸籍が作られます。
 
家族は少し安心した表情を他人に
悟られないように退廷した。
 
その日から
苗字も名前もない
ただの少年Aが彼の実名となった。
 
少年犯罪者がすべて少年Aとなると
固体識別が大変だから、識別番号を
つけてはどうかと以前、国会で討議された
 
結果的には、識別番号をつけても
管理する意味がないとのことで
全員が少年Aのままとなった。
 
町の人は地名や身体的特徴から
南町の少年Aとか片腕の少年A
と呼んだ。
 
もちろん彼らの努力で更正する機会は
いくらでもあったが
少年Aの名前が変わることは
生涯なかった。
 
罪は名前と同じようにいつまでも
背負っていく。

その罪の内容とは関係なく
罰は平等に。。