冬枯れの散歩道。
公園の歩道で北風は枯葉を躍らせる
ダッフルを着込んだ彼女は小さな箱を抱えて
重たい足を運ぶ
みゃあと小さな声が箱から聞こえる
彼女は聞こえないふりで、賑わう参道から外れた
また声が聞こえた 箱をのぞき込むと
子猫は丸い目でおなかすいたにゃあと言った
寺の石段に箱を置き
冷蔵庫から持ち出したミルクを紙皿にうつし
子猫に飲ませた
ママになれなくてごめんね
彼女はそのまま、もと来た道を走り出した
参拝でに賑わう参道を
人波をかき分けるように。
粒の涙はあふれ、大粒になる
声をあげて泣きたい 泣いて問いたい
ママ なぜあなたは私を捨てたの?
ママ なぜ私たちを見殺しにするの?