スモッグに包まれた夜
旧新宿の闇市で彼は偽装された
中古のタイムマシンを見つけた
吃音に癖のある老店主は
ジャンク品のため返品不可と笑った。
プラズマエンジンは初期型で
エナジーは高濃度水素ガス
座標計は多次元ジャイロを応用した
プロトタイプが後付けで載っている
片道なら飛べる風情だった
こんなもんどこで拾って来たんだと
彼は古い小判を店主に渡した。
店主は睨みをきかせてライターから
マスターパスを彼の指輪に書き込んだ
彼はタイムマシンのソースセグメントを
自分のエンジンコードに書き換えて
当局に無許可のまま、共振を始める
スーッとタイムマシンと彼は潜航して消えた
しばらくすると
タイムマシンだけ帰ってきた
店主はダミーの
渡し屋として生計を立てている