September

 

残暑の町はまだまだ暑かった。
プールサイドで空を見上げながら
ひところよりも雲が高くなったような気がすると
髪を短く切った彼女は思った

 

塩素の混じったプールには入りたくなかったが
もうすぐこれも卒業だと自分に言い聞かせた

 

無邪気な同級生たちは歓声をあげながら
授業の準備をしている

 

期末に町を去った友達が絵手紙を送ってくれた
緩やかな丘陵に多くの花が咲いている
もう一度 話をしたいと彼女は考えていると

 

好きでもない男の子たちが視線を投げかけてくる
不機嫌な口元で彼女はプールに飛び込んだ

 

いっきに夏の名残は消え去り、彼女はひとりの世界に
もどる。

 

長い手足を動かすこともなく、深く深くそこへ
頭の中でループする水の音が心地いい

 

もうすぐ夏も終わりなんだ
体育教師の説教は長かったが
そんなことはどうでもいいと
彼女は濡れた髪を直した。