玉蘂

 

南の島の 森奥深く
海水と淡水が混じり合う場所に
枝を伸ばし葉を重ね合わせ
空を囲むその木の花は
甘い香りを漂わせる。

 

虫たちはそれに誘われて
集まってくるのは青い満月の夜

 

昼間は見えないものが
夜には見えるものがある。

 

花を咲かせ 実を結び 種を残す。
時への逞しさとはそういうこと。

 

一晩明けて そのあたりの水面には
多くの薄桃色の花が華やかに漂い
やがて静かに沖へと向かう。