1982年 休止

春先、翌年受験を控えた彼らは
バンド活動の休止を宣言した。
 
足掛け2年のバンド活動は
去年の夏に敢行したライブハウス出演をピークに
熱が冷めかけていた
 
ここを区切りとして
スタジオを借り、身近な友人を集って
最後のお披露目会をやることにした。
 
しばらく演奏してなかった曲や
新たに作った曲で再びバンドが
結束したのは少し前の冬の日。
 
ギターもドラムも去年より確実に上手くなっている
キーボードはもともと上手なので
バンドの安定性は増したと思う。
 
オーデンスの温かい拍手に迎えられ、
彼らはいつものヤツでオープニングをきめた。
 
何度か紆余曲折はあったものの
スピード感もあり一番いい出来だったと思う。
 
ボーカルの彼女の声もビブラートがうまく乗っている。
歌に説得力があると誰かの短評を思い出す。
 
バンドを始めた頃はぎこちなかった5人組だったが
だんだんよくなってきて、もう少しやってれば
もっとよくなるだろうなとそれぞれが思っていた。
 
途中、ベースのトラブルがあり演奏を中断したり
練習不足でうまくいかない場面もあったが
 
最後はアンコールまでいただく事になり
バンドはいい雰囲気で終わることができた。
 
決して上手なバンドではなかったが
楽しいバンドだったと思う。
 
 
スタジオの帰り道、冷たい星空を仰ぎ見た夜は
機材の重さよりも高揚感でいっぱいだった。
 
あんな夜は、その後
そんなには訪れることはなかった。