いままで何度か
うまく行きかけたことがあった
でも頓挫したことを悔いてもしようがない
今度はうまくいくよと
薄暗い半地下のカフェで老いた悪魔は笑った。
でも破滅させてしまうと
ゲームは終わるよと
もう一人の若い悪魔が囁く。
そうだなぁ
だから 何度も頓挫してしまうのだ
と最初の悪魔が思い返す。
人間を操るのは他愛ない。
暗に神の名を語れば
多くの貧しい民は容易になびく
悪魔の中では初級のゲームにすぎない
さらに孤立させ自尊心を煽れば
枯葉のように火がつき燃え上がるとも
彼は言った。
憎しみあい、殺しあう人間の世界を
俯瞰するのは実に楽しい。
だからこの楽しみが消えてしまうのは
いかがなものかと自問する。
少しだけ残しておこうよと
若い悪魔が紫煙を燻らす
破滅させるには惜しいなぁ
と老いた悪魔はチェスの駒を戻した。
世界は少しだけ静かになった。