並木坂を上りきったところに小さなライブハウスがある。
彼らはそこで小さなライブを手短にやる。
小さな声で挨拶もそこそこに
最初の曲はバンドの紹介を絡めたいつもの曲だ。
ガツンとギターがローコードをかき鳴らせば
ベースも負け時と地を這うように追いかけてくる。
ドラムはフロアータムをうまく使ってリズムに工夫を加える。
ボーカルが数行の歌詞を歌うとソロもなく
2分くらいで最初の曲は終わってしまう。
一言 『ども』。
パラパラと常連さんとお店の人から拍手。
眠たくなるような土曜の午後は近所の女子高生達が
冷やかしに来る。
そういうときでも彼らはいつもと変わらない。
短いリフを慎重に重ねて、音楽に集中している。
ようやく場に馴染んできたころ
彼らはステージからそそくさと引っ込み
ギターケースを抱えて並木坂を下っていく。