国道を渡りきる前に母犬はダンプの陰から突然
車線変更をしてきたトラックに弾き飛ばされた
春の陽だまりのアスファルトに投げ出されて
母犬はしまったなと思った
何度もこの国道を横切って住処に帰っていたのに
今日に限ってこんなことになるなんて
空を仰ぐと青い空に雲が浮かんでる
まったくもってこんなことになるなんてと
彼女は悔やんでみた
ドライバーはトラックを路肩によせて
彼女の容態をのぞきこんだ
(なんであんなとこにいたんだ)と
男はつぶやく
瀕死の彼女にとって残してきた子供たちの
ことだけを気がかりに思う
それは本能として。
人間には神さまというのがいるらしいが
私らにはそんなものはいないからねぇ。
ただ頭上には空があるだけなんだ
まったくもって。。