月光

コトンコトン
 
二両編成の電車が月明かりの中を
走ってる
 
イチノセキから乗り込んだ彼女は
静かに彼の手紙を読む
 
コトンコトン
 
レールを刻みながら
青い月夜の田園を進む
 
改札で誰かに呼び止められた気がした彼女は
夕映えの待合室で彼の姿を見つけた
 
でも あれは彼ではない
 
パーンと警笛が鳴って
彼女はふと窓に視線をうつす
 
真っ黒な硝子に彼女の白い顔と
赤い紅が浮かぶ
 
旅たった彼が残した手紙は
ジョバンニの地図のようなものだ
 
あの地図はどこで失くしただろう?
リンゴの匂いがほのかに漂う
 
コトンコトン コトンコトン
 
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