忘れもの

 

花の都に鉄の雨が降っている

これから何世代もの親子が

錆びた土を耕す事を思うと

胸が痛い。

 

忘れものはないかと

家を出る時に家族に問われて

大丈夫だと笑って見せた。

 

ホームで待つ列車に乗るころから

それが気になり始めた。

大事なものを忘れてきたような

気がする。

 

そんな不安も都会の華やかな

暮らしの中に埋没していった。

夢のような日々なら

夢のままでいいではないかと

いう人もいるが、

それに向き合う事ができなければ

忘れものを思い出す事は出来ない。

 

庭先にすみれ色の雨が降っている

夏の終わりに。

遠い国の話だが

身近な未来の話のように感じる。