10年前に戻れるなどとは
にわかに信じられなかった
しかし目の前の女性特務官は
持論を何時間も唱えている
とにかく小さな機械に押し込まれると
自然に睡魔が彼を襲った。
さっき飲まされた薬のせいだろう…
目が覚めると夜だった。
不思議な夢を見たもんだ。
隣で女房と4歳の娘が寝ている。
それからの毎日はなんとなく
居心地が悪かった。
自分の記憶の中の世界と現実は
ズレていた。
それからの10年には
大規模震災はなかったし、
パンデミックも起きなかった。
第三次世界大戦は四日で終わって
枢軸国は併合され
北極は人工氷河で復活した。
すべては思い込みで夢なのか?
ふと冗談で娘にそんな話をしてみた。
パパ、もしパパの思っている世界が
なかったとしても何か問題あるの?
明日何が起きるかはわからない
未来は白紙なんだよ パパ。