1942年 ラングーン

ラングーンに着いた翌日は雨だった。
本土空襲の話を新聞で目にして
更に彼は気を滅入らせた。

古い友人で従軍記者のH氏が
気を利かせて
郊外まで車を回してくれた。
南国の割には気候は
穏やかなのかもしれない。

最近おもしろいものが見つかったのだと
H氏は言う。雨も上がり
目的地の寺院まで到着すると
先日 整備の途中で
少女のミイラが発見されたと言う。

テントで日除けされた現場は
休日もあり人影はなかった。

丁寧に運び出された少女は髪を束ね
装身具を身につけ赤い衣装を纏い
寝台に寝かされている。
多くのお札が取り付けてあることに
彼は尋ねた。

御守りだとH氏は言う。
冥土に旅立つ我が娘のため
災いからを遠ざけたいと言う親心は
どこも同じなのだよと。

いつの時代も愛するものを見送る時
多くの魔除けを結んであげる事しか
出来ない無念さは同じなのだと
>彼は噛み締めた。

戦況はきびしくなるとH氏はそう言って
翌日マンダレーに向けて旅立った。