迷走


会社員であるからには勤務地の移動は
や無得ないものがある。

そう割り切れるものならば。

年末に内示が出て4月には移動しなければ
ならない状況に少し前の彼はあった。

何度か訪れたことのある地方の工場だから
顔なじみがないわけではないが、
そこに住むとなると話は異なる。

一人暮らしなんて気楽でいいじゃないとか
新幹線なら4時間程度じゃないかとか
週末帰ってくればいいとか
気休めばかりが頭の中をめぐる。

今更転職して新しい職場を探すなんて
このご時世、気が動転していると
家族には言われかねない。

前向きになって
一人暮らしを始めたものの
大切なものが本当は身近にあって
かけがえないのない時間だったと
気づかされることは多い。

一度手を離した生活を
再び手に戻すのは至難の業なのだ。