毒薬

 

その薬を彼に飲ませて

殺してしまえば

あなたはお家に帰れるのよと

母親は彼女を吹き込んだ。

 

もういいじゃない帰っておいでよと

姉たちも彼女を諭す。

 

彼は彼女を愛する人には選ばなかった

ただそれだけなのに

 

海の底から眺める月は

丸いんだか四角いんだかわからない

 

でも月の灯がさしこむだけで

彼女の気持ちは落ち着く

 

好きになってもいいじゃない

私の事だもの

 

誰かを愛することが悲劇に

つながるとは思いたくない

 

そんな事思ってもいませんと

彼女は微笑み

 

やがてくる朝日の中で

真珠の泡となったのです。