下山

登り行く雲は上へ上へと臨み挑む
蒼空を目指して迫る頂きに
佇む時間は一瞬に過ぎない。
 
永遠に日々は繰り返されるとの
錯覚の中で彼は
何かの単位を持って限界を感じるとき
それは山を下る合図になるのだと悟る
 
下界を見渡しながら坂は麓へつながる
下りは楽である。
 
すべての登り道が思い出である。
あの時は正論のつもりだったのだが
振り返れば我がままだっただけに過ぎない。
 
選べる道は無数にあるが
良くも悪くも進む道は一つだけだ。
 
その道を降りながら(終わり)と言う
寂しさも虫の音と共に
苦く味わう。