夏の夜、修羅が一匹、町の方から飛び込んできた
『たのむ 匿ってくれ』
アラムハラドは修羅に憐みを感じ
引き戸の中に彼を隠した
松明をもった襷掛けの追手が辻のあたりで
お尋ね者を探し回っている。
彼は修羅に水を飲ませ、傷の手当てを施した
気が落ち着いたのか修羅は大根飯を食べながら
寝てしまった。
アラムハラドは薄い布団をかけ
しばらく外の物音に耳を澄ました
何人かの大人の足音が行ったり来たり
しているのはまだ捜索が続いているからだろう。
夜更けになって修羅は彼に礼をいって旅姿に化けた。
『世話になった 今は何も返すことはできない』
アラムハラドはそのことには触れずに
新しい靴を彼に与え戸を開けた。
修羅は脱兎のようにそこから飛び出して
闇の中へ消えていった
平和に暮らせるのはああいう輩が裏で働いてるからだ
すべてがあからさまに目に映るものだけではない
見えない世界で戦っている奴もいるのだ。
アラムハラドは水瓶に映る月をすくった。