たわわに実った檸檬が二つ
小さな枝をしならせている
冬が近づくたびに浅黄色に色づく
よく晴れた空に一人
彼女の気分は檸檬のようには晴れない
新しい生活は始まったが
不安も多い
気分をかえて近くの公園を散策すると
すでに広葉樹は半分ほど葉を散らせ
湿った歩道を埋め尽くしている
この一年は長いようで
短かった
そして明らかに彼女の翼は
飛び上がる高度を落としている
それならば新しい場所で
リセットするのがいいと選んだ道
だったが、なかなか壁も厚い
赤いコートのポケットから
千切った檸檬をとりだすと
厚い皮のまま一口齧る
新しい酸味がいっぱいに広がると
思わず空を見上げた