It's a little bit funny this feeling inside

西早稲田の長いエスカレータを下ると
ちょうどホームに中華街行きの急行が入ってきた
 
平日のラッシュアワーだが
もともと乗り降りが少ない駅だから
難なく彼は席に座ることができる。
 
おもむろに前を見ると若い男女がいた。
どこかで遊びの帰りなのか、二人は着飾って
仲良く並んで座っている
 
ドアが閉まり電車は次の駅を目指して走り出す。
彼は静かに目を閉じ考え事を始めたが
 
前の二人は上機嫌で話を続ける。
特に女は男の腕を抱きしめて素直な
気持ちをもてあましてる。
 
よほど楽しかったのだろなと思いつつ
ふと顔をあげると前の男と目があった
 
さすがに気恥ずかしくなったのか
男はうつむいてしまった
 
いくつかの駅を過ぎて、車内も混み始めたが
女のおしゃべりは続き、男も都度、相槌を打つが
声はしだいに小さくなっていった。
 
すると
女が突然しくしく泣き始めた。
何が起こったのかわからない乗客も不思議そうに
二人を見ないように見ていた。
 
しばらく男の胸で泣き、女は疲れて寝てしまった。
男は彼女の頬をぬぐった。
楽しかった日の終わりは寂しいものだなと彼も思う。
 
渋谷の駅を出て前の二人がどうなったのかは
彼もよく見ていなかった。
立っている乗客が増え二人を遮ってしまったのも
原因のひとつだった。
 
自由が丘で乗客が降りていくと
隙間が少しあき、彼女は彼の肩で眠り
彼も彼女の頭を寄せて眠っているのが見えた。
 
彼が日吉で降りる際も
二人が仲良く眠りこけてるのを見たような気がした..
 
しばらくして
中華街の駅は騒然としていた。
銀の床にはストレッチャが並べられ
救急隊は若い男女を運び出した。
 
薬のせいか、顔は白かったが、
二人は静かでやさしい微笑みに満たされていた。