ビオトープ

新しい担任の意向で
彼のクラスの生き物係は担当制ではなく
持ち回りとなった。
 
生き物に触れる機会が少なくなった
現代において、みんなで飼育することは
大切なことなんだと説いた。
 
そんなわけで月に一回は水槽の水替えと餌やりの
当番が回ってくる。
 
最初のころはみんな楽しんで参加していたが
最近は興味も薄くなり、ときどき滞ることがあった
 
そんなある朝、一匹が水面に浮いていたが
みんなは気づかぬふりをしてホームルームに入った
 
放課後。
 
不憫に思ったのか、心優しい誰かが
多量に餌を与えた
 
次の日は二匹が浮いていた。
最初の一匹は膨らんで朽ち始めていた。
 
水は淀み、いやな臭気が後ろの席では漂ったが
それでも誰も知らん振りをして授業をうけていた。
 
一週間たってすべての生き物が死んでしまった。
悪臭だらけの教室に
こらえきれなくなった学級委員が
担任に捨ててもいいか?と聞いた
 
捨ててもいいけど、それは君たちのことだし
この世界のことなんだよと先生は言った。
 
生き物は閉ざされた環境の中で
餌や酸素、水などを得ることができない。
 
だから誰かが与え続けなければ生きていけない。
そのことを無視していれば、
いつかはみんなこうなるんだよ
 
先生は水槽を抱えて、教室を後にした。
 
光る風は教室のカーテンを揺らして
夏休み前の教室に入ってきた。