流刑

政治犯としての彼の罪は重かった。
大罪として極刑が検討されたが、人を殺めたわけでもなく
前例がないことから裁判所は裁量を決めかねていた。
 
終身刑ではどうかという賢人の意見もあがったが
世論は、彼が再び社会に帰属することを拒んだ。
国民は永久に彼を認めないだろう。それだけは一致していた。
 
特別法廷において、彼の罰は
国籍を剥奪し、国外へ追放とすることに決まった。
私財は没収され、彼の一族もそれに準じる。
 
冷たい秋雨の降る朝、彼らは小さな船に乗せられて岬を出て行く。
沖合いで外洋船に乗せられ 国境まで連れて行かれたあとは
再び小船に乗せて黒潮にゆだねられるらしい。
 
ただ運良くこの国に帰ってきたとしても
外国人として再び同じように排除されることになる。
 
故郷を追われる刑こそが一番厳しい罰かもしれないと
昨日の社説がうそぶいている。