再生

天主堂を背にキラキラと光る波間を見ていると
今がいつの季節かわからなくなる
 
頬に陽の温もりを感じながら
旧校舎から聞こえてくるピアノはたしか
ショパンのなんたらだったかと彼女は思う
 
結局 一緒に死ぬはずだった彼は
約束の場所に現れなかった
 
そんなものか。。
 
かといって一人で死んでみても
その死に様がなんとも滑稽に思えて
 
昨夜、何度も書き直した遺書は
途中のコンビニのゴミ箱に投げ捨てた。
 
「うわあああああああぁ〜っ」と怒りにまかせて叫ぶと
石の坂を下っていく観光客達が驚いて振り返る。
 
この狭い界隈に
天主堂と神社、教会とお寺が寄り添うように並ぶ
 
それほど神様に近い場所だったのかと
今更ながら彼女は一人苦笑する。
 

ノクターン
そういえばそんな名前の曲だっけ?
 
前髪を揺らす潮風は
新しい夏の始まりをつたえている