Hey Jude

白い顔に、毬栗頭の関西弁、
中学にはいって同じクラスになったSは
父親の都合で兵庫から引越してきたばかりだった。
 
そんなSが僕を家に招いてくれた理由はよくわからなかったが
二人は共通した趣味がいくつかあり
自然と仲良くなった。
ビートルズも二人の共通項だった。
ただ Hey Judeについては僕はあまりしらなかった。
 
僕の興味は前半のガチャガチャしてた頃のビートルズ
後半のややこしい部分は敬遠していた。
Sは逆に前半は疎かったが、中期・後期については
詳しかった。
 
「ほんまに Hey Judeしらんの?」

Sは目を丸くし、耳たぶを真っ赤にして
それがどういう歌かを熱弁してくれた。

そしてこっそり彼の姉の部屋で
Hey Judeのレコードを聞かせてくれた。
 
「ちょっとだけやで」

すでにビートルズはだいぶ前にに解散していて
ポールは新しいバンド、あとの3人はバラバラでレコード
を出してるくらいしかしらなかったけど
 
はじめて聞いたHey Jude
女の子の部屋の甘い香りや、
すわり心地のいいベッドと共に
なんともいい気分で頭の中に熔けて言った
 
「すごいやろ?」

Sは得意げに顔を覗き込んだ。
 
何回か二人で聞きなおしているうちに
いつの間にか日も暮れてしまい
玄関で別れを告げようとしてたころ
 
彼よりも白くて華奢な
Sの姉が自転車で帰ってきた。
 
初めてその涼しげな瞳の微笑にふれた五月の帰り道
何度も聞いたリフレインを口ずさみながら 
 
Hey Judeっていいなぁ」って

思った。。