防人

北のほうの国から早朝、ミサイルが打ち上げられた。
 
数年前に国家予算ののべ1/4を投じて完成した
国土防衛システムは速やかに検知し
ミサイルの弾道を追尾すると共に
関係各所に警報を発した
 
最初に官邸に現れた国務大臣
水玉のパジャマ姿だったが、
すみやかにシステムのダブルチェックを実施し
誤報の確立が5%未満であることを確認した
 
次に現れた外務大臣
いちごの歯ブラシを咥えたまま
東大陸の国と電話で情報の交換をおこなった
 
多くの関係閣僚もパジャマとスリッパ姿のまま
登庁し、即座に職務に励んだ。
 
国防婦人会なる民間組織も竹やりを持って
児童公園に終結し、春空を不安そうにあおり見た。
 
しばらくしてミサイルは公海上で息絶え
海のモズクいや藻屑となった
 
それから40分ほどして総理大臣が
母親の車で送られてやってきた
 
「ほんとに この子は朝が駄目なもので オホホホ」

毛布を抱いた彼はまだ半分夢の中だった。