家政婦

奥様は若い家政婦に申し付けた。
 
リビングの角にほこりが溜まっているじゃない!
洗った皿に小さな食材がついているわ!
お肉の焼き方にムラがありすぎる!
洗濯物の皺がとれてないじゃないの!
...
 
立て続けにクレームをつけると最後に
「きちんとやってちょうだい!」

キリキリと目を吊り上げて
奥様は買いものへ出かけてしまった。

 
細面の彼女は赤い眼鏡の端を少し押さえながら
おもむろに自分のPCを取り出し
 
掃除機ロボットをサービスモードに切り替え
ネット経由でアクセスコード開くと

メモリに割り振られたプログラムコードを数行書き直し、
ティーチングを実行させている間に

食洗機のアクセスコードを開き
洗浄水の流量とタイマーパラメータを変更し

オーブンレンジはターンテーブルの回転数を0.5%落とし、
リフレクタの角度を修正するとともに

洗濯機の交換時期を超えた消耗品をWEBのパーツリストから選択し
ネット経由でユニット交換をメーカサービスに指示しておく。

おそらく明日にはユニット交換のための
サービススタッフがやってくるだろう。
 
「じゃ 行くね」
 
彼女は短く機械たちに言葉を投げると
アクセスコードをクローズして
次のカスタマー先へ向かった。