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この国には八百万の神がいる
それは自然の驚異に対する戒めのようなもので
そこに縋ろうという気持ちではない
 
エスキリストのような人はいない
この国には
 
ただイベントとしての聖誕祭はある
結婚式場としての天主堂らしきものはある
牧師の格好をした立会人もいる
 
でも心から、その神に縋ろうとする人は多くはいない。
 
祈るのは先祖の墓である
厳粛なのは彼岸だったりお盆だったりする
 
先祖から繋がるリンクが未来に繋がっていく
その空や海、風や匂いまでもが
祈りの対象になる
 
自分のIDをきちんと持っている。
自分が何者でどこから来たかということを
ちゃんと理解している
それがこの国の人たちだと思う。
 
だから多少のことでは揺るがないし
パニックになることはない
 
ちゃんと大人も子供もわかっている
自分を救うのは自分しかいない