NINE

彼は外野だった。
それほど野球が好きだったわけでもないが
旧友の付き合いで弱小草野球チームにいる。
 
そんなわけだから向上心もなく
足りないメンバーの一人として
この広い野原を担当している。
 
はるか遠くに響く金属音が
たまの緊張感を与えてくれるが
短い攻撃時間と長い守備時間は
彼に四季の移り変わりを教えてくれる
 
少し前までは、
じりじりと強い光で首のあたりを
焼かれていたのに
 
このごろは赤とんぼが
右に左にアプローチをかけてきたりして。
 
そんなときに
仲間が騒いでる声を耳にすると
高く上がったフライは彼の上空にあり
ふと空もずいぶん高くなったなと感心したりする。