やさしい王様

それまでは彼は王であり
誰からも親しまれ、頼られては絶対的な支持をもっていたのだが
 
ある朝 どうにも困難な懸案に取り囲まれたとき
『私も被害者だ。』とこぼした。

人々はなるほど たしかに王様は私たちと同じ被害者だ。
そうだそうだ 可哀相に

とはならず、とたんに彼は身包みをはがされて町の外に放り出された。
 
あるときは権力者になり、あるときは大衆になるような
そんな王様はいらないということなのだ。
 
王ならばいかなる時でも威厳を保ち、揺るがない信念で構えるしかないのである。