暗夜模索

遅い夜だった

青々と伸びた稲穂が風を受けて
大きな蜥蜴のようになびく。
 
折からの台風の影響かもしれぬと
彼を乗せた電気自動車は田舎道をひたすら走る。
民家も人影もなくただ
整列した電信柱だけが
彼の行き先へと真っ直ぐ連なる
 
ヒュンという音を合図に突然
すべてのライトが消えてしまうと
 
あとはただ漆黒の静寂の中を
なめらかに移動する彼しかいなかった
 
いつまでもどこまで。