夕凪の町

繁華街の裏通りをふらふらと歩いてた。
記憶の中をさまよい歩くように確かこの辺だったような?
 
電車通りから入った狭い路地は意外と時間貸しの駐車場が多いことに気づく。
区画整理後の再利用待ち?ということだろうか。
 
勝手な想像をしながら残暑の中、焼けたアスファルトの上をゴム底の革靴で歩く。
風はなく じわりと汗ばむ。
 
こんなことなら事前に書店の地図でも確認しておけばよかったと
後悔してもしょうがない。
 
道行く人に声をかけなかったのもなんとなく自分の記憶が
まだ確かなものであると信じていたかったから。
 
ふと水の匂いがしたような気がした。河が近いのだろうか。
小さな医院の前に出た。そして小さな案内板。
 
そこが 『爆心地』 だった。