買ってもらったばかりの彼の自転車には、小さな羽根がついてた
最新式でまだ他には売ってないんですよ。
と太った店主は話しかけてきた。
「うそだい 健太君だって乗ってるよ」そういうと店主は
「そんなことない、ほらここをみてごらんなさい」
「この小さなボタンを全力でこぎながら押すと宇宙まで行けるんです」
そういうと、笑いながら奥の方へ下がった。
なるほど、こんなボタンは健太の自慢の自転車にはついてなかった。
そうなると彼はいてもたってもいられない。
欲しいと駄々をこね、拝み倒して ようやく買ってもらったのが土曜の夜。
開発が進む丘の上に陣取り、彼は一気に駆け下った。
小さな羽根は風を切りビューと鳴った。
まだまだと、こいでこいで
あっというまに自転車は交差点の先まで突っ走った。
ボタンを押すべきかどうか。。
彼は迷った。
宇宙に行ってみたいのはやまやまだけど
ほんとに行ったらかえって来れないのではないかと。。
それからしばらくして彼の自転車が盗まれた。
そして近所のいじめっ子が行方不明になった
あのボタン使ったな。。彼にとってはちょっと複雑な心境だった。